2024年1月25日木曜日

靴磨き

  ホーチミン最終日、知らない街を歩くのが好きな私も、歩き疲れて、空港への出発時間まで時間を潰そうと、セブンイレブンで現地通貨を使い切る為にビールを2本買って、公園で、疲れた足を開放させる為に、靴を脱ぎ、ビールのタブを開けようとしていた時に、靴磨きの青年が遠くの方から歩いてきた。こちらは警戒心バリバリ。

 これから空港へ向かうからもうお金は残っていません、と、4000ドン(27円)の財布の中を見せました。

 OK,OK,というので、外国人と話をしたいのかな?と、話が出来る距離に座り、どっから来たとか、何歳だとか、どのくらい稼いでいるか?とか、子供の写真を見せられて、「かわいいね」とか、話をしていた。その彼、国内とは言え、遠く離れたハノイから、靴磨きの出稼ぎに来ているという。ハノイとホーチミンは、札幌から大阪くらいの距離。ハノイでは仕事が無いからホーチミンまで出稼ぎに来ているという。ビールが2本あったので、1本差し出したが、お酒は飲まない、と断られた。

 そんな話をしている隙に、少し口の開いた私の靴を手にし、仕事を始めだした。

 口の開いている靴の先に接着剤を付け、これでOK,とか言い、次に、踵が削れて斜めになっていると示し、斜めをどうやって補修するのか、見ていたら、斜めを修理することなく、3mm厚の一枚のゴムを踵一面に貼りだした。もちろん、外皮表面は、色の違っていたところに色を付け足してくれたり、ピカピカにして貰った。

 やって貰っている時に、内心、これで、残金4000ドン(27円)だけでは申し訳ない気持ちになり、1000円位は払うことを覚悟していた。

 

 作業が終わったら、「アフューせんえん」と言い出した。「a few 千円」。数千円頂戴よと。31歳のその彼は、私が財布の中身を見せた時に目ざとく千円札を発見していたのだ。

 そっからは、こちらも「戦闘態勢」。

 数千円でも、日本だと安いとか、こんなにきれいに直し、「like new」全く新しく見えるようになったとか、主張しだした。ここで、普通に千円を払ったら、もう千円、と言い出しかねない。「ぎりぎりを狙ってくる」な、と思ったので、

 千円札を財布から取り出すそぶりを見せ、もうこれだけだよ、グッバイと、渡す前にグッバイと言い、相手の表情を伺いながら千円を渡した。交渉成立。

 別れ際、握手を求められ、握手し、「いい旅行を」との言葉を残し、去って言った。終始、31歳の青年に一方的に場を握られていた。

 結局払った金額は2000円と4000ドン。

 手元には、確かに綺麗になった靴は残った。旅行から帰ったら捨ててしまおうかなとも思った靴でしたが、この靴を履く度に、この青年の生命力の強さを思いだすことになるのでしょう。


 真正面から、靴を磨かせてくれ、金をくれ、という方法だと、100%拒否される、と、経験上学んでいたのだろう。

 ベトナム人の、逞しさに、「日本人の、特に私の、足りないことを」まざまざと体感させて頂きました。

 全く、腹は立たなかった。商売はこうやってするものなのですね。

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